全国 > コラム > 1年で1,507開設・484消滅——障害者グループホームの出入りを数えた
2025年3月末から2026年3月末までの1年間で、障害者グループホーム(共同生活援助)は全国で1,507か所が新たに掲載され、484か所が掲載から消えた(出典:WAMNET、2026年3月末時点)。差し引きの純増は1,023か所である。単純化すれば、3つ新設されて1つが消える市場だ。開設ラッシュの裏側で、定着せずに撤退する事業者も相当数存在する。なお、本稿が扱う障害者グループホーム(共同生活援助)は、高齢者向けグループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは別の制度である。
WAMNET掲載データ(2026年3月末時点)を1年前の2025年3月末と突き合わせると、新たに掲載された事業所は1,507か所、掲載から消えた事業所は484か所だった。差し引きの純増は1,023か所である。この数字は開設・掲載開始・廃止といった動きをまとめて集計した「掲載ベース」の数字であり、行政手続き上の指定日・廃止日と厳密に一致するとは限らない。それでも、1年間で1,500件を超える新規参入と、500件近い撤退が同時に起きた事実は、この業界の新陳代謝の速さを表す。
新設が消滅を大きく上回るペースで市場全体は拡大しているが、消滅も無視できない規模で発生している点が特徴である。開設を検討する事業者にとっては参入余地の大きさを示す数字だが、同時に一定数が定着せずに撤退している市場でもある。GHを探す家族にとっても、「増えている」という情報だけでなく、その裏側で入れ替わりが起きている業界だと理解しておくことが、施設選びの判断材料になる。
1年間の増減を都道府県別に見ると、増加の中心は大都市圏に偏る。増加数の上位は次のとおりである(出典:WAMNET、2026年3月末時点)。
大阪府を筆頭に、東京都・埼玉県・神奈川県という首都圏、そして愛知県が増加数の上位に並ぶ。上位5都府県はいずれも人口の多い大都市圏であり、地方の県とは対照的な動きを見せる。一方で、山形県・長野県・山口県は、いずれも1年間で1事業所減少した。増加が大都市圏の都府県に集中する一方、地方では横ばいにとどまらず減少した県も出ている。
全国合計では純増+1,023だが、その中身は都道府県ごとに大きく異なる。開設を検討する事業者にとっても、GHを探す家族にとっても、地域によって選択肢の増え方が大きく違うことを、この県別の差は示している。
「消えた484」には、廃止・休止・統合など複数の要因が混在する。WAMNET掲載データは事業所の掲載有無を追う設計であり、消滅理由を廃止・休止・統合のいずれかに分類する情報を持たない。したがって、484のうち完全な事業廃止がどれだけを占めるのか、休止や統合による一時的な非掲載がどれだけかは、本データからは区別できない。この点は正直に述べておく必要がある。
たとえば、運営難航による廃止と、法人合併に伴う統合とでは、業界の健全性という観点での意味合いが異なる。廃止が多ければ経営の不安定さを映す数字になり、統合が多ければ再編が進んでいるだけとも読める。しかし現状のデータからは、この違いを判別する手立てがない。1,507という開設数だけを見れば拡大一色に映るが、484という消滅数の内訳が不透明である以上、「開設ラッシュ=定着した市場」と単純化するのは早計である。開設を検討する側は、この484という数字を、撤退のリスクが一定数存在する市場の裏づけとして踏まえておく必要がある。
厚生労働省の社会福祉施設等調査(2024年10月1日現在)では、共同生活援助の事業所数は14,241、前年比+890(+6.7%)である。同調査では、利用実人員も185,349人(2024年9月末)に達している。WAMNETの2026年3月末時点における全国15,000か所という数字と、社会福祉施設等調査の14,241という数字は、調査時点も集計方法も異なるため単純比較はできない。
それでも、国の公的統計とWAMNETの実測データが、事業所数の増加という同じ方向を指し示している事実は確認できる。社会福祉施設等調査は毎年10月1日を基準日とする公的統計であり、WAMNET掲載データは随時更新の名寄せデータである。基準日も集計方法も異なる2つのデータが、同じ拡大局面を示している点は、この1年間に起きた出入りの実態を裏づける材料になる。事業所数の増加は、利用実人員の増加と並行して進んでおり、市場の拡大がGHという受け皿の広がりに直結していることがうかがえる。
本サイトの数字はすべて障害のある方向けのグループホーム(共同生活援助)です。高齢者向けのグループホーム(認知症対応型共同生活介護)は含みません。名前が同じでも別の制度です。
事業所の数と一覧=WAMNET 障害福祉サービス等情報公表システム オープンデータ(2026年3月末時点)/人口=総務省 住民基本台帳(令和7年1月1日現在)。詳しくは出典とデータについて。
「この1年の増減」=2025年3月末→2026年3月末の掲載数の差(開設・掲載開始・廃止を含む)。複数の町に住居を持つ事業所は代表の町で数えています。